上昇志向の強く、優れたソフトウェアを届けたいソフトウェア開発者には必ず読んで欲しい1冊です。
Team Geek ―Googleのギークたちはいかにしてチームを作るのか Brian W. Fitzpatrick, Ben Collins-Sussman, 角 征典 |
本書の目的は、プログラマがソフトウェア開発を効果的かつ効率的にするために、他人の理解・コミュニケーション・コラボレーションの能力を向上させることである。
本書はピープルウエアのようにマネージャーがチームを成功させるための本ではりません。実際にソフトウェアを創り出すプログラマのための1冊です。著者の2人は実際にGoogleでチームをリードしています。そして、オープンソースソフトウェアの世界で活躍するスーパープログラマ達が本書の推薦の言葉を寄せているのがとても印象的で期待を膨らませてくれました。
翻訳者はあのリーダブル・コードを翻訳された角さんです。リーダブル・コードがコードの書き方の基本を教えてくれたのならば、Team Geekはチームで効果的かつ効率的に開発するために必要なことを教えてくれます。
いつやるか。今でしょ。
という表現も使われている。押さえるところを押さえている。さすがである。
本書ではチームで働くときのポイントとして、以下の三本柱をあげている。
あらゆる人間関係の衝突は、謙虚・尊敬・信頼の欠如によるものだ。
広く一般的に利用されているソフトウェアを見れば明らかだが、1人の力によって創られたソフトウェアはほとんど存在しない。
仮に君が天才だったとしても、それだけでは不十分なんだ。天才だってミスをする。優れたアイデアやプログラミングスキルがあっても、開発したソフトウェアが必ずしも成功するとは限らない。今後のキャリアがうまくいくかどうかは、同僚たちとうまく協力できるかにかかっている。
優れたソフトウェアを届けたいのであれば、最高のチームが必要だ。最高のチームになる必要がある。そして、チームの中で唯一、自分の力で即座に変更可能な変数は自分である。まず、自分が変わることができれば、最高のチームに少しずつ近づいていくことができるだろう。本書を手に取るところからはじめてみてはいかがだろうか?
エンジニアに向けて具体的な内容にしているが本書の特徴といえる。特にリーダーとして参考にしたくないアンチパターンが書かれているのがとても参考になる。
3.4 アンチパターン
3.4.1 アンチパターン:自分の言いなりになる人を採用する
3.4.2 アンチパターン:パフォーマンスの低い人を無視する
3.4.3 アンチパターン:人間の問題を無視する
3.4.4 アンチパターン:みんなの友達になる
3.4.5 アンチパターン:採用を妥協する
3.4.6 アンチパターン:チームを子どもとして扱う
パフォーマンスの低い人を無視するということは、パフォーマンスの高い人を新しくチームに入れないということでもある。そして、チームにいるパフォーマンスの高い人達が流出していく。最終的にチームはパフォーマンスの低い人だけになる。自分の意思でどこかへ行けない人たちだからだ。それにパフォーマンスの低い人をチームに残すことは、その人のためにもならない。そのチームで仕事ができなくても、他の場所で役立つことが多いからだ。
著者自身がエンジニアであり、自身の経験と過去に遭遇したリーダーがいたからこそ、そこから多くのこと学べる内容である。
監督型の旧来のマネージャーは不要で、新しい形でのリーダーが求められている。サーバントリーダーについても説明されている。サーバントリーダーシップについては過去に講演をおこなっているので、興味がある人はどうぞ。
本書は現代的にチームビルディングしていくために必要なノウハウが凝縮されている。エンジニアとしてチームのリーダーとなる立場の人にはもちろん必須だが、リーダーの元で働く人にもオススメできる1冊である。
なぜならば、最高のチームになるためにリーダーの行動や他者の行動、自分が取るべき行動が理解できるようになるからである。また、今いるチームが成功する文化を育んでいるのかを見極めることができる。育めるリーダーでなければ見切りをつけることも考える必要がある。
私の場合は、上司に進めたら即座に「読みます!」と返答してくださったので、私は安心して、これからも効果的かつ効率的にソフトウェア開発に打ち込めるはずだ。素晴らしいチームであることに本当に感謝である。
本書のアドバイスやノウハウは、なにもソフトウェア開発者に限った内容ではない。人生において、さまざまな場面で役に立つ内容です。WEBサービスやスマホアプリの開発などに携わっている企画職の人やデザイナーにも読んでもらいたい1冊です。
Team Geek ―Googleのギークたちはいかにしてチームを作るのか Brian W. Fitzpatrick, Ben Collins-Sussman, 角 征典 |